コラムvol.32 「お母さんの権利を守る 成年後見のお話し その2」

私の母は2年前に認知症になりました。同居している私が世話をしてきたのですが、最近急激に症状が進み、私一人で母を看るのは辛くなってきてしまいました。そこで夫と相談し、専門の施設に母を入れることになりました。施設に入所するにはお金がかかるので、銀行に母名義の預金をおろしに行ったところ、「母の委任状が必要です」と言われました。でも今の母には委任状が書けません。そうしたら銀行に「娘さんといってもお母さんの預金は引き出せないので、成年後見人を選んで下さい」と言われ、結局お金はおろせませんでした。娘の私がなぜ母の預金をおろせないのでしょうか?
質問者:モンぶらん(仮名)

まず、「なぜ成年後見人なら預金がおろせるの?」という疑問からです。この疑問のお答えは、そもそも成年後見制度って何のためにあるの?というところが分かってしまえば簡単です。…成年後見制度はですね、モンぶらんさんのお母さんのように“判断能力が不十分な方の権利を守る”ためにある制度なんです。ですので、自分で判断できないモンぶらんさんのお母さんの権利を守るため、家庭裁判所が選んだ成年後見人が、お母さんの預貯金などの財産を管理をしたり、施設に入る契約などの手続きを行います。
だから、モンぶらんさんがお母さんの預金をおろすことがダメなんじゃなくて、モンぶらんさんが預金をおろすということが、果たして本当にお母さんのためなのかが他人から見て分からないから、ダメだというだけなんです。モンぶらんさんは本当にお母さんのためにするのでしょうけれど、例えば浪費家の放蕩息子がギャンブルのためのお金が欲しくて勝手に親の預金をおろす場合と、他人から見たら区別がつかない、ということなんです。
そこで、家庭裁判所がモンぶらんさんのお母さんのために適切な成年後見人を選ぶことになりますが、じゃあ誰を選ぶのでしょう? それは、モンぶらんさんが適切だと家庭裁判所が判断すればモンぶらんさんが選ばれるし、そうでないのなら、例えば司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門家を選ぶこともあります。
ところで、この成年後見人、家庭裁判所が選ぶということは、家庭裁判所で選んでもらう手続きをしなくちゃなりません。この手続きはモンぶらんさんが自分でもできますが、少々面倒な手続きですので司法書士などに依頼することもできます。それから気になる費用のこと。一番最初の成年後見人を選んでもらう手続きに、なんだかんだで15〜20万円くらいです。結構かかるのね、とビックリかしら。費用の内訳で一番大きいのはお医者さんがお母さんを鑑定する費用かな。成年後見人は、いったん選ばれたら、お母さんが亡くなるまでお母さんのためにお仕事をします。ですから、成年後見人に報酬をお支払いする必要があります。ではいくら位お支払いするのかですが、これは家庭裁判所が適正な金額を決めます。そしてその報酬は、お母さんの財産の中から支払われることになります。
なんとなーく成年後見制度ってこんなものかな、とイメージできたかしら。なかなかすぐには分かりにくい制度です。しかもモンぶらんさんのように突然直面してしまったら、やっぱり困惑すると思います。そんなママのために情報。『リーガルサポート』でインターネット検索してみてください。情報提供だけでなく相談もやっています。私も所属している司法書士の成年後見専門の団体です。実は結構身近な話ですので、将来のことを考えて一度調べておくとイザという時に安心かな〜と思います。
司法書士 森 香苗(もり・かなえ)東京都出身。大学法学部を卒業後、法律事務所をはじめ、不動産鑑定士事務所、一般企業、派遣社員など様々な仕事を経験した後、独立開業。
不動産鑑定士事務所にいた頃、競売物件を扱う中で、住宅を差し押さえられてもどうすることもできないなど、法律の知識がなかったために不利益を被る人をたくさん見る。
また、シングルになったが財産分与のやり方がわからず、問題を抱えこんでしまう女性にも多数会う。法律を知らないために大変な思いをしているママが多いことを痛感。少しでも彼女たちを支援できないかと考え、司法書士という立場から様々な相談に応える。
相談・問い合わせなどはメールで(名前と連絡先をお忘れなく)
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