ピピっと子育て情報

掲載日:2008年12月01日

北区ブックスタートの取り組み

北区ブックスタートの取り組み

全国の各自治体で取り組んでいる“ブックスタート事業”。それぞれのアプローチの仕方は様々ですが、北区は「本を渡す」ことにとどまらず充実したフォローアップ事業が際立った存在です。今回は北区の取り組みをレポートします!(取材:ともとい)

◆ブックスタートとは

 ブックスタートとは、赤ちゃんへの語りかけや保護者と赤ちゃんが絵本を通して楽しい時間や、ふれあいの時を過ごすきっかけになるようにと、すべての赤ちゃんと保護者を対象に絵本を配布する取り組みです。1992年に英国で始まり、日本では2001年4月に12市町村が実施をはじめ、全国各地に広がっています。自治体によって配布物や取り組み方は異なりますが、赤ちゃんと保護者が絵本を通してふれ合ってほしいという願いは同じです。北区も2003年からこの事業を開始し、現在は滝野川・赤羽地区はボランティアを中心に、王子地区はこの地区のママたちへのフォローアップ対応を実施するため、平成18年4月から“子育て応援隊 でんでん”にフォローアップ事業が委託され、王子地区のブックスタートと合わせた運用が行われています。
 具体的には、3か月検診で保健所を訪れた赤ちゃんと保護者に、まずはブックスタートのオリジナル・エコバッグに入った本と資料を配布します。そしてママたちの集まりの場である「赤ちゃんサロン」や、親子で参加できるイベント「子育てガーデン」といった子育て支援の場を紹介し、育児に孤軍奮闘するママたちへのサポートを行っています。
でんでんと図書館のスタッフが協働して行います

これが配布キット。これが初めての絵本という赤ちゃんも多い

◆まずは北区保健所でのはじめの一歩

北区保健所で配布するということは、全ての赤ちゃんとその保護者にコンタクトを取れるという最高のチャンス。このチャンスを有効に生かして、一人でも多くの赤ちゃんに絵本を届けたいという想いがあります。
北区保健所での3ヶ月検診と説明を終えた保護者一人一人にブックスタートのスタッフが声をかけます。時間が無い方には手渡すだけですが、余裕のある方にはスタッフが赤ちゃんに本を読むことから始めます。1人のスタッフが1組の親子を担当するため、赤ちゃんの様子を見ながらゆっくりと話すことができるのです。
多くのママさんたちが、3か月の赤ちゃんに絵本は早いのでは?と考えているようでしたが、スタッフが読み聞かせを始めるとジーッと本を見つめる我が子を見て、少なからず驚いている様子。「見ているということは、興味がある証拠なのよ」というスタッフの言葉に、「早いと思っていましたが、もう読んでも大丈夫なんですね」「今度図書館に行ってみます」と嬉しそうなママの声も沢山聞かれました。
一組ずつなのでじっくりと話せます

赤ちゃんの本に関する質問などを受けることも…
絵本は、赤ちゃんの言葉の発達を助けるという長所もありますが、それ以上にママやパパから読んでもらうという親子のコミュニケーションという深い意味があります。大好きな人の声で、自分のペースで読んでもらうことがどれだけ赤ちゃんに安心感を与えることか…それを伝えたいという思いがこのブックスタート事業を支えているようにも思います。

◆北区ならではの取り組み

 本来なら、「本の入ったキットを手渡し、本の読み方や選び方などの話をする」部分までがブックスタート事業。しかし北区では、フォローアップ事業として、「赤ちゃんのためのおはなし会」を各図書館で実施したり、事業委託された民間団体の“でんでん”が『赤ちゃんサロン』と『子育てガーデン』を実施するなど、ママたちの友達作りを応援し、親子で参加できる無料イベントを提供しています。

赤ちゃんサロン

 ママの「お友達づくり」も大きな目的の一つである赤ちゃんサロンには2バージョンあり、ママのための集まりをメインにしたものと、絵本の話を中心にするものがあります。
 今回は前者のサロンにお邪魔しました。リピーターも多いというこのバージョンは、東京都の子育てアドバイザーでもある竹田さんが、赤ちゃんとのコミュニケーションの取り方をはじめ手作りおもちゃの作り方を話したり、グループワークで悩みや不安を共有したり、様々な取り組みがされています。
 自己紹介ではママたちが「何でも口に入れてしまって心配」「絵本を読んでいても集中力が続かない」などと、それぞれの心配事を話しはじめます。竹田さんは、その一つ一つに「赤ちゃんは口から情報収集をしているから、取り上げなくて大丈夫」「大人は最初から順番に読みたいかもしれないけれど、赤ちゃんはページを飛ばしたり好きなページをゆっくり見たいしたいもの。自由にさせてあげてね」などと、丁寧にアドバイスしていきます。
同時に、「ペットボトルの蓋は赤ちゃんは呑み込めるサイズ。ハイハイが始まったら、子どもと一緒に家の中をハイハイして歩いて、危険なものが無いかチェックしましょう。」などと具体的な話には、ママたちは一心に聞き入っていました。
 最後は月齢別に分かれてのグループワークで、最近の子どもの様子や悩みなどを共有していきます。独りで考えていると深刻になりがちなことも、口に出して話し「ウチも同じです」などとママ仲間と共感しあうことで、想像以上に気持ちが楽になります。
 また、ママが赤ちゃんに読み聞かせをしてみたり、図書館にある布絵本で一緒に遊んでみたりと、図書館への導入という大切な目的も忘れません。最後にはママにでも作れるカンタンおもちゃを紹介。100円ショップで集めた素材で様々なバリエーションが作れること、ママたちの注目を集めていました。
 もう一つの絵本バージョンの赤ちゃんサロンでは、絵本のエキスパートである西村さんが絵本を通しての母子のコミュニケーションを中心に話します。
 「成長に合わせた本の選び方」や「おススメの絵本の紹介」などの話はもちろん、大人になってから絵本から遠ざかっていたママたちの本への見方・考え方を変えたいという思いもあるそうです。勉強でも情報でもなく、絵本を媒介にして赤ちゃんとママが共有する時間を大切にしてほしいという、ブックスタート事業の根幹の考え方を伝えるサロンになっています。
まずは自己紹介から…

会場には布絵本も用意されていました

会場で配布された絵本をサンプルに読んでみます

さぁ!今度はママの番!

絵本を置いておくと、自分で読み始める赤ちゃんも

食べ物の絵本は赤ちゃんに人気の絵本

スタッフとの交流も子どもにとっては良い経験 グループワークでは悩みや不安の相談の時間も 靴下などの身近なモノで遊ぶヒントも教えてもらえる♪

子育てガーデン

 子育てガーデンはブックスタートのもう一つのフォローアップ事業として実施されているイベント要素の強い取り組みです。ピアノやオカリナなどのプチコンサートをはじめ、絵本と音楽を調和させたプカプカ音話など、子連れではなかなか楽しむことのできない音楽を中心にした催しを1~2か月に1度の割合で実施しています。
 参加したママたちからも「久しぶりに音楽に触れたような気がします」「子どもを連れてきてもOKというのではなく、最初から“赤ちゃんのため”と謳われているいるので安心して来られました」というママの声も多く聞かれます。


北区のブックスタートは“本を渡す”という単なる行為ではなく、それをきっかけにママたちと地域の先輩ママとの交流を持ったり、専門家との橋渡しをしたり、最終的にはママたち同士の繋がりを持ってもらいたいという願いも込められています。
なぜすべての赤ちゃんと保護者を対象にしているかというと、本を好きな家庭にもそうでない家庭にも同じように本を媒体にして保護者と赤ちゃんが心を通わす時間を共有してほしいと考えるからです。“子育て支援”と“読書推進”の両輪のバランスをとりながら、自治体と地域の人々の連携プレーで実施している北区ブックスタート事業。
でんでんのスタッフ。この笑顔でママたちを元気にしています!
発信する側の一方通行ではなく、ママやパパたちとの交流を通して何が必要で何を求められているのか、探りながら一歩一歩前進している取り組みでもあります。

(取材:元井朋子)